世界をリードする「環境国家」の構築を!!

対談 環境問題を考える

「政府とNGOが堅いパートナーシップを結び、 開発途上国への支援、 指導体制を確立することが必要だ」 と語る自見庄三郎(左)と山本公一氏


 自見庄三郎代議士は昭和58年の初当選以来、医師という専門的知識を生かして、環境政策に深くかかわってきました。ふるさと北九州が各種の公害被害に悩まされた体験からも、公害の未然防止、被害者救済、地球環境の保全政策など多くの環境問題に対処してきました。
 また世界でもトップクラスの環境保全関連技術の育成支援政策の構築にも貢献しました。
 現在も自民党環境基本問題調査会長として、わが国の環境政策をリードしています。
  また、国連公認のNGO団体である「地球環境行動会議(GEA=ギアと略称)」の副会長として、世界の環境政策について行動と提言を続けています。
 環境問題は、 多岐多方面にわたり、 日本一国だけで解決することは困難です。 経済発展と環境問題をいかに両立させるか、 世界に範たる環境立国を目指すにはどうすればいいのか。
  このほど東南アジア3か国の環境視察から帰国した議員の対談を掲載します。
 この対談は自由民主党機関誌「月刊自由民主」平成16年9月号から転載しました 。


出席者

自見庄三郎
 元郵政大臣 党環境基本問題調査会長 衆議院議員
山本公一
  衆議院内閣委員長 元環境政務次官 衆議院議員

  
東南アジア3国を視察
自見庄三郎 山本先生、 お疲れさまでした。
山本公一 自見先生も、 お疲れさまでした。 ベトナムは暑かったですね。
自見庄三郎  お互いに昨日帰国したばかりですが、 向うは、 えらい暑くて湿気の多いところでしたね。 しかし、 この一週間は、 東京の方が暑かったようです。 地球温暖化が進んでいるのでしょうね。 福岡の私の選挙区では一昨年、 桜が有史以来もっとも早く咲いたんです。 それから中国のゴビ砂漠から黄砂が北九州市に飛んでくる。 朝起きたら車の屋根に黄色い砂が一面に…。 これも有史以来と言われていますが、 やはり地球の環境はおかしくなっているのでしょう。
山本公一  私の選挙区は宇和島ですが、 自然が変わりつつあるということは、 子どもたちも肌で感じています。 瀬戸内海にシイラという魚はいなかったのですが、 今はいる。 これは南の魚なんですけれどもね。 温暖化で、 瀬戸内海の平均海温が上がってきているのでしょう。
自見庄三郎  福岡の博多湾でも熱帯魚が獲れるんですよ。 昔は沖縄あたりにしかいなかった魚が、 博多湾で獲れるようになった。
山本公一  クマゼミとかチョウの分布も、 どんどん北上しています。 かつてクマゼミというのは西日本を中心に生息していたが、 今は関東でもひんぱんに見られるようになっています。 北の方も暖かくなっていますが、 いずれ九州、 四国は亜熱帯になってしまうのではないのか、 近い将来に…。
自見庄三郎  地球の温暖化がこのまま進むと海水の膨張などで海面が上がる。 地球の温度が5.8度上がると88cm海面は上がると言われています。 そうすると、 フィジーやサモアなど、 島嶼国は水没してしまう。 上海も水の中、2億人がこの地球に住めなくなるそうです。 2080年までに40cm海面上昇した場合、 世界の沿岸域の最大2億人に被害が出るそうです。
 

 

 

途上国も温暖化対策を
山本公一  ですから、 温暖化対策は先進国だけでやれという話じゃなくなります。 途上国の方々にも分っていただく努力をしていただかねばなりませんね。
自見庄三郎  今回のわれわれの東南アジア視察は、 国連公認のNGO (非政府組織) であるGEA (地球環境行動会議) から派遣されたもので、 A班はマレーシアとベトナム、 B班はカンボジアとベトナムに行ってきました。 ベトナムで両班が合流したわけですが、 主に環境に関するNGOあるいはODA(政府開発援助)、 そういったところの現場を視察し、 また東南アジア諸国の環境対策、 つまり途上国の環境問題を今後、 いかに位置づけていくか各国首脳と意見交換をしてまいりました。  
 日程は7月19日から26日まででしたが、 私はマレーシアとベトナムに参りました。 山本先生はカンボジアとベトナムに行かれましたが、 ほかに公明党の田端正広先生(衆議院議員)、 それから私たちの先輩である愛知和男元衆議院議員がGEAの事務総長を務めておられるということで、 ご同行いただきました。 愛知さんは元防衛庁長官、 環境庁長官を務められた方です。
 こういったメンバーで東南アジア三国を視察してまいりましたが、 21世紀は環境の世紀と言われるように、 日本国内のみならず、 外交、 とくに環境外交は大変大きな柱にしなければならないと思っております。 きょうは 『月刊自由民主』 で、 山本先生との対談の機会を与えていただいたことを環境基本問題調査会長として、 まず心からお礼申し上げます。
 

 

 

環境問題をライフワークの一つに
山本公一  いま、 自見先生からお話がありましたように、 今回、 カンボジアとベトナムを視察させていただきました。 私が環境問題に真剣に取り組み始めたのは、 第二次橋本内閣で環境政務次官を務めたときでした。 その時、 大木浩環境大臣のもと、 京都会議いわゆるCOP3という歴史的な場面に立ち合わさせていただきました。 そんなこともあり、 環境問題をライフワークの一つとして活動しております。
自見庄三郎  私も、 南アフリカで行われた 「環境・開発サミット」 には16人の国会議員団の団長代理として出席しましたが、 世界191か国・地域の政府、 自治体をはじめ、 企業や市民、 NGOなど約2万人が集まり、 世界最大規模の国際会議となりましたね。
山本公一  はい。 各国首脳は百人以上も参加し、 日本政府代表団には、 小泉総理をトップに、 川口順子外相、 大木浩環境相はじめ、 橋本龍太郎元総理、 豊田章一郎元経団連会長ほか財界の方々も多く出席されました。 NGOを中心とする民間参加者も500人を超えたと聞いています。
自見庄三郎  山本先生は、 現在、 衆議院の内閣委員長でございますが、 自民党の環境部会長を異例の三期も務められ、 さらに政務調査会副会長(環境担当)もされた。 議員立法のフロン回収破壊法を中心となって成立させるなど、 文字どおり先生は、 環境問題に最も精通された国会議員であると誰もが認めております。 そう、 環境教育推進法も、 山本先生はじめ鈴木恒夫先生らが頑張ってくださった。
 私も公衆衛生学・疫学を専攻した医師として、 昭和58年の初当選以来、 国会活動を通じて環境政策に力を注いでまいりました。 四年前から党環境基本問題調査会の会長を務めさせていただいておりますが、 山本先生とは、 ここ10年ほどお互いに環境問題で頑張ってきた同志だと思っております。
山本公一  ありがとうございます。 先輩から身に余るお言葉をいただき恐縮です。 自見先生こそ、 政界では環境問題の指導的立場にあられます。
 ところで、 今回、 カンボジアとベトナムを視察させていただきましたが、 どちらかというと私はこれまで、 先進国の立場から地球環境問題を見てきたような気がします。 今回、 いわゆる途上国の環境に対する考え方を直接知り、 そして環境インフラなどの現状をこの目で視察させていただき、 とてもいい勉強になりました。
 自見先生はよく 「環境と経済の両立は21世紀のわが国の重要なテーマだ」 とおっしゃっておられましたが、 途上国に関しては先進諸国が考えているような両立という話とは、 若干物事を整理してこの問題に取り組んでいく必要があるのではないのか、 そんな気がしました。 先生は、 そのあたりどうお感じになられましたか。
 

 

 

経済発展と環境問題は対立しない
自見庄三郎  確かに先進諸国と途上国の間には、 矛盾といいますか、 対立が露骨に出てきます。 途上国の方々は、 「今の状況を作ったのは先進国じゃないか」 という気持ちがありますが、 経済発展と環境問題は決して対立するものではありません。 一見、 環境対策をやるとお金がかかるようだけれども、 それを放っておいて水質汚濁、 大気汚染などがどんどん広がり、 手がつけられないような状況になってから対策を講じることになると、 かえって巨額なお金が必要になります。 発展途上国の指導者には、 そのことをきちっと理解していただき、 今のうちに手を打っていく必要があります。
山本公一  まさに日本が、 そうでした。
自見庄三郎  わが国は、 経済発展を急ぐ過程において、 水俣病、 あるいは四日市ぜんそく、 イタイタイ病など、 自然環境の破壊のみならず、 人間の生命までが脅かされるという、 大変不幸な経験を持つ国です。 それを乗り越えて、 日本は今、 さまざまな環境政策をやっているわけですから、 発展途上国も日本の轍を踏まないようにしていただきたい。
 私はベトナムのフアン・バン・カイ首相に、 こういった主旨のことを申し上げましたが、 カイ首相は今年の6月に来日したときに、 小泉総理から 「日本の公害問題のような失敗を繰り返さないように」 と、 しっかり聞かされたと話しておられました。
山本公一  前に自見先生たちと官邸に小泉総理を訪ねたときに、 「私も環境の小泉だから」 と言っておられましたね(笑)。
自見庄三郎  それでカイ首相は、 帰国して閣議でそのことを議題にしたそうです。 東南アジアでも、 とくにベトナムはすさまじい経済の成長を見せているので、 「日本の失敗」 を各界の指導者たちも、 きちっと頭の中に入れて、 今から対策を行っていただくことが大事だと思います。
 

 

 

公害を見事に克服した北九州市
山本公一  とくに自見先生は、 北九州市出身の国会議員ですから、 公害問題は身にしみておられる…。
自見庄三郎  ええ、 北九州地域は、 1901年の官営八幡製鉄所の創業以来、 重化学工業地帯として発展してきましたが、 経済の成長、 産業の興隆は、 同時にそれまで経験したことのない公害問題をもたらしました。
 今から五十年近く前になりますが、 大規模な工場が林立する洞海湾周辺地域である八幡西区の城山地区では、 日本一の降下ばいじん量を記録し、 確か昭和44年だったと思いますが、 日本で初めてのスモッグ警報が発令されました。
 そんなわけで、 大勢のぜんそく患者が発生した上、 洞海湾にも工場からの未処理排水や生活廃水が流れ込み、 大腸菌でさえ棲めない 「死の海」 と言われていました。
山本公一  そんなにひどかった公害地区も、 市民や企業、 行政が一体となって公害対策に取り組んだ結果、 北九州市は、 きれいな空と海を取り戻しましたね。
自見庄三郎  総計7千億円もかかりましたが、 かつて七色の煙と言われ、 日本一の降下ばいじんを記録した空も青く澄みわたり、 昭和62年には環境庁から 「星空の町」 に選定され、 その翌年には 「第1回星空の町・青空の街サミット」 を開催するまでになりました。
 北九州市は 「公害を克服した市」 として、 国連からも2回表彰されています。 全国3300市町村の中で、 表彰されたのは北九州市だけです。
 今、 山本先生がおっしゃったように、 北九州市の公害克服は、 市民、 企業、 研究機関、 行政、 政治という地域社会の関係者が一体となり、 パートナーシップにより達成したものです。
 私は使用前・使用後と言っていますが、 1060年代の七色の煙に覆われた空と、 蘇った青い空の写真をファン・バン・カイ首相はじめ、 訪問先の環境大臣らにお見せしたら、 驚いていました。
山本公一  「死の海」 と言われた洞海湾もきれいになりましたね。
自見庄三郎  「スクリューも溶ける『死の海』」 と言われた洞海湾も、 工場廃水の規制、 下水道の整備など、 行政と企業が一体となって進めたしゅんせつ事業の成果によって、 水質が大幅に改善されました。 今では100種類を超える魚介類の生息が確認されており、 多くの野鳥も飛来しています。
1960年代当時の北九州市の空
公害を見事にを克服した現在の北九州市の青空

  

環境教育が大切になる
山本公一  今回、 東南アジアを視察して思ったのですが、 日本のODAでいろんなことをしておりますよね。 カンボジアでもベトナムでも。 しかし、 どちらかと言うとハードな部分が先行していますが、 こと環境に関していえば、 もっとソフトなODAがあってもよいと思います。
 つまり、 日本の失敗を繰り返さないためにも、 「こうすれば高度成長の中でも公害を防ぐことができますよ」 と、 環境省、 外務省あたりが一緒になってソフトの面からのODAを行えば、 途上国は助かるのではないでしょうか。
自見庄三郎  ヨハネスブルグ・サミット (環境・開発サミット) では、 持続可能な開発とともに、 環境教育が大きなテーマになりましたね。 地球レベルでワールドワイドに環境教育をどうするのかと…。
 そこで小泉総理は、 国の発展の礎として教育を重視していることを強調し、 5年間で2500億円以上の教育援助を行うことを明言しました。 国際公約してきたのですから、 環境教育をODAの一環として世界に、 とくに途上国に広めていく責務があります。 これは非常に大事なことだと思います。
山本公一  発展途上国には、 自立する意欲を尊重し、 対等なパートナーとして支援の手を差し伸べていくことは大切です。 日本では環境教育も徐々に定着してきているようですが、 カンボジアの小学校では情操教育がカリキュラムの中にないのです。 学校をつくる会のNGOの視察ということで学校を訪ねましたが、 やっと一学級だけ音楽教育を始めたところでした。 情操教育をやらないで、 環境に関心を持つ子どもたちが育つのかどうか。 ちょっと不安を覚えましたね。
 それから途上国は、 まだまだ環境インフラの整備が遅れているので、 その辺を中心に手助けする必要があると思います。 わが国は80年代以降、 国内で環境政策を成功させ、 現在、 世界的な 「環境技術」 を持っているのですから…。

 

 

ペットボトルから作るネクタイ
自見庄三郎  実は今、 私のしているネクタイは、 ペットボトルで作ったリサイクル製品なのです。 20世紀の文明社会は、 大量生産・大量消費・大量廃棄という時代でゴミは全部捨ててきましたが、 21世紀は、 ゴミをきちんとリサイクルしようと。 その象徴がこのペットボトルのネクタイです。 ベトナムのファン・バン・カイ首相はじめ、 マレーシアの環境大臣らにお会いしたときに、 ペットボトルから作ったネクタイをお土産に差し上げてきましたが、 みなさんびっくりしておられました。 手触りも色も、 とてもいいと…。
山本公一  これから目指す循環型社会は、 リサイクル(循環)、 リユース(再利用)、 リデュース(減量)の経済・社会システムをつくり、 焼いたり埋めたりする以外に手のないゴミを数パーセントに減らしてしていく必要があります。
自見庄三郎  われわれは、 ベトナムのホーチミン(旧称サイゴン)からバスで2時間くらいのロンアン県というところに行きました。 そこでは、 100万トンものコメがとれるそうです。 で、 モミ殻も250万トンも出るというのですが、 それを燃料にして発電をしようという実験をオーストラリアのODAでやっておりました。 そんなに大きな装置ではありませんでしたが、 草の根的というのでしょうか、 そういうODAも大事になってくると思います。
 それからもう一つ、 地球は一つであるということ。 資源や食糧を輸入に依存しているわが国は、 世界的規模での 「発展と安定」 が不可欠です。 世界規模での環境悪化は、 難民の発生や貧困を生み出し、 ひいてはテロの温床となりかねません。
山本公一  確かにかけがえのない地球ですから、 環境面の安全は、 世界的に確保する必要があります。
自見庄三郎  いわゆる 「環境安全保障」 は、 わが国のみならず、 世界の安定のためにも欠かすことはできません。 自国の 「国益」 と 「地球益」 は相反するものではありません。 環境型社会をつくるということは、 決して経済の再生、 発展と対立するものではないということです。
ベトナムのカイ首相を表敬訪問した自見庄三郎(左)
もみがら発電装置を視察する

  

環境ビジネスは47兆円産業に
山本公一  近年、 環境ビジネスも非常に伸びていますね。
自見庄三郎  平成12年の時点で30兆円産業になっていますが、 平成22年には47兆円産業にまで成長すると言われています。 経済産業省と環境省が珍しく一致した数字を出しておりますが、 自動車を買う時もリサイクル料が含まれる法律ができました。 自動車リサイクル法が来年1月に施行されますが、 これだけでも、 たちまち1兆円のお金が動きます。
 それから、 皆が持っている携帯電話には、 世界で一番金の含有率の高い金鉱石よりも純度の高い金が入っているんですよ。 ですから、 これからきちっと金を回収する技術を開発し、 そういう社会の仕組みを整えていくことが大事でしょう。
山本公一  今度、 パソコンリサイクルの仕組みができましたから、 引き続いて携帯電話にも注目する必要があると思います。 携帯電話は小さいものだから、 廃棄物になってもあまり気にしていませんが、 とにかく数が多いですからね。
自見庄三郎
マレーシア天然資源環境大臣と会談する自見庄三郎(右)
 産業廃棄物の処理や大気汚染防止の分野などでもエコ・ビジネスが、 どんどん成長していますし、 各自動車会社も社をあげて燃料電池自動車の実用化に取り組んでいます。 燃料電池は発電効率が高く、 環境に優しいなど優れた特性をもっています。 水素を燃料とするので二酸化炭素の排気ガスも出ない。 出るのは水ですから、 水素の持つクリーンなイメージも手伝って、 「究極の自動車動力源になる」 と予測する研究者も多いですね。 わが国政府も、 燃料電池自動車の導入に踏み切り、 世界をリードする先端的な環境対応にあたっています。
 一方では、 グリーン税制のように、 環境に優しい製品を購入すると、 税制面での優遇措置も推進しています。 大量生産・大量消費、 大量廃棄の20世紀型のライフスタイルから、 適量生産、 適量消費、 少量廃棄の社会・経済体制に変える。 そのためには、 国民のライフスタイルを変革し、 産業の生産体制をそれに適応させるような政策誘導は、 これからも必要でしょう。
山本公一  環境ビジネスという世界は、 日本が将来的に世界の中で生き残っていくための最大のキーポイントになると思います。 日本は資源のない国ですから、 知恵を出せばいい。 燃料電池とか、 バイオエネルギーなどをどんどん開発し、 先端をゆく日本の環境技術を最大の武器に、 世界の中で確固たる地位を占めていけるのではないか、 私はそう思っています。
自見庄三郎  実際に、 しっかりリードしている分野もあります。 世界をリードできる技術力、 研究開発力は日本に十分ある。 ですから、 ベトナムの首相にペットボトル再生ネクタイを贈ったら、 「自見さん、 これは日本に技術力があるからできるのでしょう」 と、 ポツリと一言。
山本公一  本当に一言でしたね。
自見庄三郎  一言でしたが、 それが日本の技術開発力の素晴らしさを象徴しているのだと(笑)。
山本公一  繭(まゆ)やトウモロコシを原料にしたプラスチックなども実用化できそうですね。
自見庄三郎  今のプラスチックは百年たっても腐りませんが、 繭や植物から作ればすぐに土に戻ってしまう。 日本のそうした技術はすごいですよ。
山本公一  日本は、 自動車の排気ガス規制を一番厳しくした国ですからね。 「そんなことをやったら自動車産業は滅びる」 と言われたが、 それを技術革新で乗り越え、 日本の自動車を世界でも最も競争力のあるものにしてしまった。 ですから、 災いを転じて福となすということが大事だと思います。  
 

 

 

エコ・ビジネスの発展に期待
自見庄三郎
東南アジア3か国視察団の一行(右よりわが党の愛知和男元環境庁長官、 自見庄三郎、 ベトナム・カイ首相、左端が山本公一氏)
 燃料電池の話が出ましたが、 日本が80年代から蓄積してきた 「エコ・テクノロジー」 を基礎とする技術革新、 国内体制を整備する必要があります。 そして、 この分野を輸出産業として大きく発展させなくてはいけない。
 エコ・ビジネスを大きく飛躍させるためには、 これを支える科学技術の振興発展が欠かせません。 そのためには、 世界に通用する技術を開発する必要がある。 苦しい予算の中でも、 研究開発費だけは伸びています。 とくに4つのテーマ、 環境、 IT、 ナノテクノロジー、 バイオですか。 それから、 2年前に研究開発減税と設備投資減税をあわせて1兆2千億円の減税をした。 これだけ財政が厳しい中、 予算も出し、 減税もしているのは環境分野だけです。 ですから与党としてもしっかり応援していくことは大事だと思いますね。
山本公一  わが国には集塵装置など優れた技術がたくさんありますが、 とくに温暖化対策の技術革新は大きな課題です。 産業界も大いにチャレンジ精神を発揮し、 技術革新を進めてほしいと思います。
自見庄三郎  同時に環境に優しい技術や商品がビジネスとして成功するメカニズム、 仕組みを導入することも必要です。 先ほどもふれましたが、 例えば税制の活用や、 エコ・ラベリング制度の普及、 新製品の公共セクターによる率先導入などが有効でしょう。
山本公一  エコ・ビジネスを振興するためには、 やはり政治の役割が重要になりますね。
 

 

 

「適量生産、適量消費、少量廃棄」の文化を
自見庄三郎  「環境立国」 を国家の優先的政策として実行するためには、 教育・人材育成、 雇用の場の確保から、 国の予算、 税、 法体系や行政機構に到るあらゆる分野で、 わが国の有する人的、 資金的資源を重点的につぎ込む必要がある。 こうした実態的な裏付けをすることによって、 初めて環境主導国家が実現できるのではないでしょうか。
 それから、 「新しい生産・生活文化を環境から発信する」 ことも大切になります。 自然から無制限に収奪し、 大量の有害廃棄物を出し、 自然や生態系をないがしろにするような生産・生活様式は、 わずかここ半世紀の経済至上主義が生み出した現象です。 かつての日本人は自然と共生し、 その文化は自然の一部でした。 世界を指導する環境主導国家を目指すためには、 国内の環境政策を確立するとともに、 政策を超えた 「適量生産、 適量消費、 少量廃棄」 の文化を再び発展させる努力が必要です。
 私は生活を快適にする技術革新の恵みを享受しながら、 日本人が持っている暮らしの知恵・価値を生かして、 潤いのある生活へと改革していくことは、 われわれの意思と努力によって必ず実現できると信じています。 そのためには、 消費者の意識革命を進めることこそ、 「環境主導国家」 を実現するための不可欠にして最善の道だと思います。
山本公一  これまで心ある消費者は、 「環境に負荷を与えるものは買わない」 「使い捨て商品は買わない」 などの行動を通して環境問題に取り組んできました。 グリーン・コンシューマーリズムは、 「買わない」 から 「購入」 へ180度転換した考え方になりますね。
自見庄三郎  ええ、 環境に配慮した商品を積極的に購入することによって、 市場に影響を与え、 企業活動や社会を環境に配慮した方向に変えていくことになります。
 それから、 地球環境保全の担い手として、 NGOはいまや欠かせない存在に成長しています。 私も、 国連公認のNGOであるGEA(地球行動環境会議)の副会長を務め、 地球環境の保全策など政策提言を続けています。 冒頭、 申したように今回のベトナム、 カンボジア、 マレーシア視察もGEAの仕事でした。
 

 

 

環境サミットで大活躍
山本公一  一昨年に南アフリカのヨハネスブルグで開かれた環境サミットに、 われわれは政府顧問の国会議員団として参加しましたが、 16人の議員団はGEAが派遣したものです。 自見先生は団長代理として参加され、 「日本の公害経験と克服への道」 というフォーラムで発言されていましたが、 日本の存在感を十分示すことができたと思います。
自見庄三郎  団長は海部俊樹元総理でしたね。 NGOを含めて日本は最大規模の代表団を送り、 日本の環境に関する取り組みを真剣にアピールしました。 当時の大木浩環境大臣も頑張っておられた。 持続可能な開発のための日本の具体的行動をまとめた 「小泉構想」 の演説は素晴らしかったですね。
山本公一  小泉総理の演説は、 被援助国の自立を促し、 人づくりによって途上国の発展に寄与するという日本の姿勢がよく出ていたと思います。
 

 

 

GEAで途上国を支援
自見庄三郎  あの英語の演説は良かった。 私は環境・開発サミットが行われた前の年、 2001年11月に、 今回、 山本先生が訪問したカンボジアへ行きました。 国連の 「持続可能な開発に関するアジア太平洋円卓会議」 に出席したのですが、 私はそこでNGOに対する財政基盤強化の支援などを提言してまいりました。 わが国も、 政府とNGOが堅いパートナーシップを結び、 開発途上国への支援、 指導体制を確立することが必要です。
 GEAは、 「地球環境賢人会議」 の開催の経緯を踏まえて、 開催に尽力した日本側の有力者、 超党派国会議員、 経済界、 学会などをメンバーに、 竹下登元総理が発起人となって発足したNGOです。 GEAは、 地球環境と持続可能な開発分野における国際社会への長年にわたる貢献が高く評価され、 団体としてUNEP(国連環境計画)からグローバル500賞をいただいてます。
山本公一  地球環境問題を解決するには、 世界の国々が国境を越えて理解と協力を深め、 政治、 社会、 文化の違いをお互いに尊重しながら、 それぞれの国情に応じた実現可能な対策を進めることが必要ですが、 NGOの役割は今後ますます高まると思います。 きょうは、 対談にお招きいただき有難うございました。


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